相続税の基礎控除で一定額まで税金がかからない!控除額をわかりやすく解説

相続税の基礎控除について解説

「相続税の基礎控除ってなんだろう?」

あなたは今、このようにお考えではありませんか?

相続税の基礎控除がどういう制度なのかよく分からない…もし相続税の基礎控除の仕組みや、自分に適用されるかどうかが知れたら嬉しいですよね。

本記事では相続税の基礎控除について詳しく説明します。さらに、基礎控除の基準や計算方法、相続税がおトクになるケースまで紹介するので基礎控除についての理解を深めることができます。

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相続税の基礎控除とは|“無条件で”一定額までの相続税を免除する制度のこと

相続税の基礎控除とは|“無条件で”一定額までの相続税を免除する制度のこと

相続税の基礎控除とは、無条件で一定額までの相続税を免除する制度のことです。

具体的には、3000万円+600万円×法定相続人の数の値が課税か非課税かのボーダーラインとなります。このボーダーラインを超えなければ、相続税は発生しないどころか申告も不要となります。一方でこのボーダーラインを超えると相続税が発生します。

国税庁の調査では令和3年に相続税がかかる人の割合は全国平均が9.3%と発表されていまうs。これは、全国で9割の人が相続税の申告義務がないことを意味します。

平成25年に行われた税制改革により、平成27年1月1日から基礎控除額が40%下がっているため気を付けて下さい。

改正前 改正後
適用時期 平成26年12月31日まで 平成27年1月1日から現在
基礎控除額 5000万円+1000万円×法定相続人の数 3000万円+600万円×法定相続人の数

遺産総額が3600万円以下なら相続税はゼロ円になる!

遺産総額が3600万円以下なら相続税はゼロ円になる!

基礎控除額は3000万円+600万円×法定相続人の数で求めることができます。そのため、3,600万円までは相続人が何人いても相続税がかからず、相続税申告も不要です。

遺産総額が基礎控除額を上回ると相続税の申告が必要となります。逆に、下回ると相続税が一切かからず、申告も不要です。

遺産総額には、不動産(家や店)、有価証券(小切手や株券)、動産(美術品、自動車)、生命保険などが含まれます。財産調査が完了した後、遺産総額はいくらなのかを計算し、基礎控除額を上回るか確認することをおすすめします。

基礎控除の基本的な計算方法|簡単早見表付き!

基礎控除の基本的な計算方法|簡単早見表付き!

基礎控除の算出方法はシンプルで、以下の計算式に当てはめて考えます。

相続税の基本控除の計算式
3000万円+600万円×法定相続人の数

法定相続人とは民法で定められた相続人を意味します。法定相続人には相続順位が定められており、

1.亡くなった人の子供・孫
2.亡くなった人の父母・祖父母
3.亡くなった人の兄弟姉妹

の3パターンの中で「1の該当者がいなけれれば2」「2の該当者もいなければ3」という様に相続人が決まります。

ただし、血縁関係ではなくても配偶者は常に相続人となるので注意してください。

例えば、妻・長男・長女が残されたケースで考えてみましょう。

この場合、3000万円+600万円×3人=4800万円が基礎控除額となり、遺産総額がこれを超えない限り相続税はかかりません。

遺産総額が基礎控除額を超えた場合の相続税の計算方法

相続税を求める5STEP

しかし、遺産総額が8000万円で基礎控除額の範囲を超えてしまった場合は、8000万円ー4800万円=3200万円が課税価格となります。

相続税額を算出する時は、まず「法定相続人が課税財産をどのくらいの割合で分割するか」を考えます。

相続税は、民法で定められた相続割合で計算します。これを法定相続分と言い、以下のように定められています。

相続順位 法定相続人と法定相続分
第一順位 配偶者:2分の1 子供:2分の1(人数で分割)
第二順位 配偶者:3分の2 父母:3分の1(人数で分割)
第三順位 配偶者:4分の3 兄弟姉妹:4分の1(人数で分割)

この表に先程の例を当てはめてみると、 課税価格が3200万円なので、妻:1600万円・長男:800万円・長女:800万円が各法定相続分に応じた課税価格となります。

次に、各課税価格に相続税の税率をかけます。税率は以下をご参照ください。

法定相続分に応じた課税価格 税率 控除額
1000万円以下 10% なし
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

各相続税額を求める時は、以下の計算式に当てはめて考えます。

各法定相続分に応じた課税価格×相続税率ー控除額=各相続税額

 この計算式に当てはめて考えてみると、

妻:1600万円×15%ー50万円=190万円
長男:800万円×10%=80万円
長女:800万円×10%=80万円

となり、相続税の総額は190万円+80万円+80万円=350万円となります。

相続税の総額を計算して、実際に相続する財産金額の比率で各相続人が負担する相続税額を計算します。実際に相続する財産は、遺言書などをもとに決定します。遺言書が無い場合には、相続財産の分配は遺産分割協議によって自由に行って良いものとされています。

例えば、遺言書に妻:5分の3・長男:5分の1・長女:5分の1の割合で相続するよう書かれていたら、

妻:350万円×3/5=210万円
長男:350万円×5/1=70万円
長女:350万円×5/1=70万円

と、各相続人の相続税額がようやく決まります。

相続税額が決まったら、配偶者控除などの制度を適用すると相続税額が減額される可能性があります。

今回の例だと妻に配偶者控除を適用すると、

妻:210万円→0円
長男:70万円→70万円
長女:70万円→70万円

が最終的に各人が支払う相続税額となります。

基礎控除以外で相続税がおトクになる2つのケース

被相続人が亡くなっている場合|できることは限られている

被相続人(財産を残す側の人)が亡くなっている場合はできることが限られていますが、例えば以下の2つの方法でかなり相続税がおトクになります。

・小規模宅地等の特例で土地の評価額を最大80%下げる
・相続税の配偶者控除により1.6億円まで税金がゼロ円になる

小規模宅地等の特例で土地の評価額を最大80%下げる

小規模宅地等の特例を利用すれば、土地の評価額を最大80%下げることができ、節税に繋がります。

小規模宅地等の特例とは、亡くなった人の土地を相続した場合、一定の条件のもと評価額(相続税申告上の土地の財産金額)を下げることが出来る制度です。

利用区分ごとに土地の評価額を減額できる割合が定められていますが、特例を適用できる土地の面積に限度があります。

利用区分 減額割合 限度面積
特定居住用宅地等
(例:家)
80% 330㎡
特定事業用宅地等
特定同族会社事業用宅地等
(例:店や事務所)
80% 400㎡
貸付事業用宅地等
(例:賃貸アパート)
50% 200㎡

例えば、評価額が1億円で、面積が280㎡の特定居住用宅地(減額割合:80%)を相続した場合で考えてみましょう。

上記の表に当てはめて計算していくと、1億×80%=8000万円も評価額を下げることができます。すると、課税対象額は1億ー8000万円=2000万円になります。相続税がかかる金額が1億円から2000万円に減ると、かなり節税できます。

なお、小規模宅地等の特例を利用するには相続税申告が必要となります。特例の適用前に遺産総額が基礎控除を超えていた場合、相続税申告を忘れずに行いましょう。

相続税の配偶者控除により1.6億円まで税金がゼロ円になる

相続税の配偶者控除により、大幅な節税に繋がります。

配偶者控除が適用されると、被相続人(財産を残す人)が亡くなった後、配偶者が取得する財産金額が一定額以内なら配偶者は相続税が一切かかりません。

配偶者控除とは、配偶者が受け取る財産のうち、下記のどちらか多い金額まで相続税がゼロ円になるおトクな制度です。

・1億6000万円
・配偶者の法定相続分

遺産総額が4億円の場合の配偶者の法定相続分は4億×1/2=2億円となります。法定相続分で相続すると、2億円1億6000万円で、配偶者の法定相続分の方が多いので2億円まで税金がかかりません。

被相続人が生きている場合

被相続人(財産を残す側の人)が生きている場合、以下の3つの方法で相続税がおトクになります。

・生命保険に加入する
・墓や仏壇を買っておく
・孫や子供に毎年110万円贈与する

生命保険に加入する

生きているうちから生命保険に加入しておくと、相続税の節税に繋がります。生命保険金を相続人が受け取ると、一定の金額まで相続税がゼロになる非課税枠があるからです。

保険金の非課税枠は、500万円×法定相続人の数で決まります。つまり、妻と1人の息子が残された場合、500万円×2人=1000万円まで死亡保険金が無税となります。

ただし、この金額を超えるとその分が課税対象となってしまうので気を付けましょう。

墓や仏壇を買っておく

生前に墓や仏壇を買っておくと、相続税対策になります。墓や仏壇など、日常的に礼拝をするものを相続した場合は相続税の非課税財産として認められています。

しかし、死後にこれらを購入した場合、墓や仏壇などを相続した訳ではないため非課税になりません。

お墓の平均価格は114万円なので高額な買い物になってしまいますが、長期的にみると生前に購入した方がおトクです。ただし、金の仏像など投資対象となりうる価値のあるものは非課税財産としては認められませんのでご注意ください。

孫や子供に毎年110万円贈与する

贈与した場合、基本的には贈与税が課税されます。しかし、贈与税にも110万円の基礎控除額があり、1年間の贈与額が1人あたり110万円までは贈与税がかかりません。

そのため、生きているうちから孫や子供に毎年110万円贈与すると、無税で財産を孫や子供に移すことができます。

これを生前贈与と言います。生前に財産を与えて死亡時の財産を少なくしておけば相続税を減らせます。110万円の贈与を10年間続けたとしたら、1100万円も相続財産を減らすことが出来ます。

ただし、法定相続人に対する贈与について2024年から、贈与を受けた日から7年以内に贈与者が亡くなった場合には、その生前贈与はなかったものとみなされ、贈与額が相続財産に含まれてしまうので注意が必要です。

【注意】基礎控除の計算が複雑になる2つのケース!

相続する権利を持っていた人が先に亡くなっていた場合

相続する権利を持っていた人が先に亡くなっていた場合

一般的に、相続税を一定の額まで免れることができる基礎控除は、3000万円+600万円×相続人の数で求めることが出来ます。

しかし、法定相続人がいない場合は、3000万円が基礎控除額となります。

また、相続する権利を持っていた方が先に亡くなった場合、その子供などが相続人となる代襲相続が発生します。配偶者、子供1人、孫2名という家族構成で子供が先に亡くなっていた場合、相続人は配偶者と孫2人なので、子が生きていた場合よりも基礎控除額が増えます。

一親等の血族(親または子供のことで、代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます。)及び配偶者以外の人が3000万円以上の財産を取得した場合、相続税は2割増しになってしまいます。

相続税の2割加算の計算式
各相続人の相続税額×20%

相続税額が300万円の場合、2割加算の人は300万円×0.2=60万円を通常より多く負担しなければなりません。

養子縁組が複数いる場合

養子縁組が複数いる場合

被相続人(財産を残す側の人)に養子が複数いる場合、基礎控除の計算が複雑になります。

養子縁組は、相続税の節税対策法としてしばしば紹介されます。実際、基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を求めるとき、養子も法定相続人に含まれるので1人につき600万円も控除を増やすことができます。

しかし、養子の数には制限があり、実子がいないなら2人、いるなら1人までと法律で決められています。

また、孫を養子にすると相続税が2割増しになってしまうので注意が必要です。

相続税の基礎控除のまとめ

いかがだったでしょうか。

本記事では相続税の基礎控除について詳しく解説しました。

遺産総額が基礎控除を超えた場合、相続税申告が必要となります。相続税申告は税理士に依頼する方が多いですが、自分で申告することで費用を大幅に抑えることができます。特に、基礎控除額を少し超えるくらいの場合や小規模宅地等の特例で相続税が0円になるようなケースは自分で申告することに向いています。

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自分で相続税申告を行い、専門家に依頼する費用を抑えたい方はぜひ『better相続申告』をご利用ください。

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監修者情報

監修者:德永和喜

徳永 和喜(公認会計士)

高校卒業して就職後、一念発起して公認会計士試験合格。

2018年から株式会社better創業メンバー取締役としてbetter相続Webアプリケーション開発に従事。公認会計士/税理士とエンジニアを兼務しながら、相続税申告の案件にも携わる。

2022年10月、経営統合により辻・本郷ITコンサルティング株式会社の執行役員就任。better相続事業部長として、自分で相続税申告や相続登記を行う方へより良いサービスの提供を目指している。

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