「借地権の相続ってどうするの?」
あなたは今、そのようにお考えではありませんか?
相続する財産の一つに借地権があり、人から借りている土地だからどうすればいいのかが分からない。
もし、借地権の相続の方法や注意点などが知れたら理想的ですよね。
そのようなお悩みを抱えている方に「借地権の相続の方法」をご紹介します。
「借地権の相続税の計算方法」や「借地権相続に関する注意点」など、相続に関することを1から全てご説明するため、素早くかつ最小限の相続税で手続きを終わらせられるでしょう。
借地権の相続でお悩みの方に、この記事がお役に立てれば幸いです。
目次
借地権の相続は計算するだけ!地主の許可は必要なし
そもそも借地権とは、建物を所有する目的で他人の土地を借りる権利のことです。この借地権は、地主の許可なしに相続することができます。
そのため相続人であれば誰でも相続することができ、後は借地権の評価額を計算して、相続税を申告するだけです。
借地権の相続税を計算する方法|「土地の評価額×借地権割合」で算出!
前提として、相続税は「現金や土地、その他全ての課税対象となる財産」から「債務」や「基礎控除額」を差し引いた値に、税率をかけて求められます。
相続税は累進課税(相続する財産が多ければ多いほど税率が増える)であるため、現金や土地などを個別にして相続税を求めることができません。
そのためここでは、借地権の評価額、つまり財産としての価値(相続税評価額)を計算する方法をご紹介します。
借地権の相続税評価額の計算方法は、以下のようになります。
自用地評価額×借地権割合=借地権の相続税評価額
※自用地評価額とは、自分の土地であると仮定した場合の土地の評価額です。
自用地評価額を求め方はこちら
借地権割合とは、その土地の権利のうち借地部分が何割を占めるかを示す割合であり、国税庁が30%~90%の間で定めています。
相続をする借地の借地権割合は、国税庁の路線価図・評価倍率表にて確認することが可能です。
具体例を1つ挙げると、自用地評価額が200万×借地権割合が30%だとすると、借地権の相続税評価額は60万円になります。
なお、例えば親族から土地を借りて、その地代を支払っていない、あるいは固定資産税額とほぼ同額しか地代を支払っていない場合には、借地権は設定されていないと考え評価は不要となります。(=相続財産にも含まれません)
また、借地権について、通常の地代を超える地代を支払っている場合等には、さらに評価額が下がる可能性があります。
通常の地代とは、借地権の設定時に権利金の受け渡しが行われる慣行のある地域で、通常の賃貸借契約に基づいて支払うことになる地代です。通常は周辺地域の地代の相場から判断しますが、過去3年間の「土地の自用地評価額から借地権評価額を控除して計算した底地価額」の平均額に6%を乗じた金額を地代の年額と考えることもできます。
通常の地代=過去3年間の自用地評価額平均×(1-借地権割合)×6%
借地権の相続に関する2つの注意点
ここでは借地権の相続に関する、2つの注意点をご紹介します。
- 相続をする時は建物の名義変更をする
- 借地権を遺贈する時は地主の承認と承諾料の支払いが必要
相続をするときは建物の名義変更をする
借地に建てられている住居に住んだりする場合、相続後に建物の名義変更が必要です。
借地権を相続する時に、特別な手続きや地主の承認は必要ありません。
借地権を遺贈する時は地主の承認と承諾料の支払いが必要
借地権を受け取る人が相続人ではない場合(法定相続人以外など)、遺贈という形になります。
借地権を遺贈する場合は、地主の承認と一般的には承諾料が必要です。
なお、承諾料は借地権の評価額の10%程度が目安とされています。
もし地主の承諾を得られない場合には、家庭裁判所に借地権譲渡の承諾に変わる許可申請が可能です。(借地借家法第19条)
借地権を相続した後の2つの選択肢|土地と建物を「残す」or「手放す」
ここでは借地権を相続した後の2つの選択肢について解説します。
- 土地と建物を残す場合
- 土地と建物を手放す場合
土地と建物を残す場合
土地と建物を残す場合、さらに以下のような選択肢があります。
建物の名義変更をして住む
二世帯住宅などで、そのまま住み続ける場合です。
相続した借地権が登記されていない場合、わざわざ登記する必要はなく、建物の登記簿の名義変更をするだけで借地権の名義変更をしたことになります
地主の承諾を得て建物の建て替え
建物が古いなどで建物を建て替える場合で、かつ契約書に「増改築する場合は地主の承諾を得ること」などのような増改築についての決まりがある場合には、地主に許可を得る必要があります。
借地人が自由に建物を建て替えることはできず、また建替え承諾料を支払わなければなりません。
なお、建替えの承諾料は借地権の評価額の5%程度が目安とされています。
もし地主の承諾を得られない場合には、家庭裁判所に承諾を求める許可申請が可能です。(借地借家法第17条2項)
土地と建物を手放す場合
土地と建物を手放す場合、さらに以下のような選択肢があります。
地主に借地権の買取を相談
持ち家があったり、土地がいらない場合などは、地主に借地権の買取を打診するのも1つの手です。
もし地主との関係がない場合などは、不動産会社に仲介してもらうこともできます。
借地権を第三者に売却
借地権は、売買することができることができます。
そのため、買取を希望する第三者に売却することも可能です。
しかし地主の許可が必ず必要になります。
また、底地と借地権をセットで売却した方が、別々に売るよりも高額で売却でき、需要も高くなるため、売却を検討している場合には、一度地主に相談してみることをお勧めします。
『借地権以外の手続きについても知りたい方は「相続手続きのスケジュールと手順」をご覧ください。』
借地権の相続で起きるトラブル3選|裁判になる恐れも!?
ここでは、借地権の相続で起きるトラブルを3つご紹介します。
- 借地権を子供名義に転貸
- 地代の値上げ
- 借地権の返還・更新
借地権を子供名義に転貸
よくあるケースは、両親と子供夫婦がいて、以下のような状況で二世帯住宅を建築するとします。
借地人:両親
建物の所有者:子供夫婦
この時、借地人が両親であるため、地主に許可を得ずに子供夫婦が建物を建てることはできません。
勝手に借地権を子供に転貸していることになり、トラブルとなる可能性があるため注意が必要です。
地代の値上げ
よくあるケースが、地主が地代の値上げを要求し、借地人はそれに反発することです。
地主は地代が高い方がいいですし、借地人は安い方がお得です。
このような状況が発生したら、まず地代が適正かどうか確認しましょう。
もし詳しい適正価格が分からなかったりする場合は、不動産屋などに相談するのがオススメです。
借地権の返還・更新
地主から借地権の返還を求められたり、更新を拒否されるトラブルがあります。
最も多いトラブルが、借地権の更新契約時に借地権の返還を求められるケースです。
借地借家法の定期借地権ではない限り、借地上の建物で居住している場合は、借地権の更新が可能な場合が多いです。
しかし定期借地権の場合は、返還の義務などがあります。
遺産を相続する時に絶対に注意するべき2つのこと|相続税が増える可能性あり
最後に、遺産を相続する時に絶対に注意するべき2つのことご紹介します。
- 相続税の計算を間違えない
- 申告期限内に提出する
相続税の計算を間違えない
相続税の計算を間違えてしまうと、税務署から追徴課税などのペナルティを受けることがあります。
特に、借地権などの土地に関する財産の価値を計算するのは、専門家ではない場合とても難しいです。
実際に、相続税の計算を間違えてしまい、追徴課税が発生するケースが後を立ちません。
そのため相続税を抑え、相続する財産を最大化するためには税理士の相談することがオススメです。
申告期限内に提出する
相続税の申告を期限内に行わない場合、ペナルティが課されるケースがあります。
たとえ相続する遺産がない場合でも、相続税申告をする必要があります。
必ず申告期限である「相続開始を知った日から10ヶ月以内」に、相続税の申告を済ませましょう。
土地を含めた相続税を安く抑えるなら税理士に相談
上記で述べたように、個人で相続税を最小限に抑えるのは難しいです。
遺産が多ければ多いほど、相続税の計算が複雑になり、個人で行うとかえって損をするケースが後を断ちません。
そのため税理士に相談をして、相続税を正確に求め、相続税を最小限に抑えることがおすすめです。
借地権の相続のまとめ
この記事では「借地権の相続税の計算方法」や「借地権の相続に関する注意点」、「よくあるトラブル」などをご紹介しました。
- 借地権の相続は計算するだけで終わり!地主の許可は必要なし
- 借地権の相続税の計算方法は「土地の評価額×借地権割合」
- 借地権の相続に関する注意点は「相続時に建物の名義変更をする」「遺贈時には地主の承認と承諾料の支払いが必要」
- 遺産を相続する時に絶対にしてはいけないことは「相続税の計算を間違える」「申告期限内に相続税申告書を提出しない」
- 相続税の計算が複雑な土地の相続は、税理士事務所に相談がオススメ
借地権の相続税を計算方法をこの記事で解説しましたが、相続税の計算方法を間違えたり、最適な遺産の振り分け方法をしないと、相続税が大幅に増えてしまうことがあります。
そのため個人で相続税に関する手続きをするのではなく、税理士にご相談することをおすすめします。
監修者情報
徳永 和喜(公認会計士)
高校卒業して就職後、一念発起して公認会計士試験合格。
2018年から株式会社better創業メンバー取締役としてbetter相続Webアプリケーション開発に従事。公認会計士/税理士とエンジニアを兼務しながら、相続税申告の案件にも携わる。
2022年10月、経営統合により辻・本郷ITコンサルティング株式会社の執行役員就任。better相続事業部長として、自分で相続税申告や相続登記を行う方へより良いサービスの提供を目指している。