相続税を少なくするための対策や生命保険金の非課税枠について解説
「相続税の対策法にはどんなものがあるの?」
あなたは今、このようにお考えではありませんか?
自分が亡くなって財産が家族に引き継がれる時に、できるだけ家族には相続税の負担をかけたくない…もし生きているうちからできる相続税の対策法があったら知りたいですよね。
そこで、本記事では相続税を少なくする対策法10選について詳しく解説します。
相続税を少なくする対策法10選|生前の行動が相続税の対策に繋がる!
以下の10通りの方法で、誰でも相続税を少なくすることができます。
- 生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)の範囲で生命保険に加入する
- 毎年110万円を子や孫に贈与する
- 住宅取得資金贈与で最大1610万円まで贈与する
- 子や孫に教育資金を贈与して、最大1610万円まで贈与する
- 20~49歳の子や孫に結婚・子育て資金を最大1110万円まで贈与する
- おしどり贈与で配偶者に住宅を最大2110万円まで贈与する
- 相続時精算課税制度を利用して土地の評価額を下げる
- アパート・マンションなどの不動産を賃貸経営する
- 養子縁組で法定相続人の数を増やす
- お墓や仏壇を生前に購入する
非課税枠(500万円×法定相続人の数)の範囲で生命保険に加入する
被相続人(財産を残す人)が生前から生命保険に加入しておくことで、相続税の対策ができます。手軽に始められるので、最もポピュラーな相続税の対策法となっています。
生命保険は、被相続人が亡くなると保険金受取人に死亡保険金が支払われますが、ある一定の金額までは相続税がかからない制度があります(※死亡保険金が支払われない生命保険もあります)。
これを生命保険金の非課税枠といい、非課税枠は、500万円×法定相続人の数で求めることができます。
相続財産:6,800万円、法定相続人:妻・子2人だった場合、相続税の基礎控除額と生命保険金の非課税枠は以下のようになります。
- 基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
- 生命保険金の非課税枠:500万円×3人=1,500万円
相続財産6,800万円のうち、死亡保険金が1,500万円含まれている場合は、6,800万円-基礎控除額4,800万円-生命保険金の非課税額1,500万円=500万円 が課税対象額となります。
相続財産6,800万円のうち、死亡保険金が1,000万円含まれている場合は、6,800万円-基礎控除4,800万円-死亡保険金の非課税額1,000万円=1,000万円 が課税対象額となります。
毎年110万円を子や孫に贈与する
毎年110万円を子や孫に贈与することで、結果的に相続税を少なくするができます。基本的に、贈与する時は贈与税という税金がかかりますが、110万円を下回るなら一切かかりません。
これを暦年贈与と言い、生きている間に15年続ければ、1人あたり1,650万円の財産を次の代に引き継ぐことができます。
ただし、亡くなる7年前までに暦年贈与でもらった財産について、法定相続人など相続で遺産を受け取る方は、相続財産として加算が必要になるルールが2024年1月1日から施行されています。
このことから、暦年贈与を生かすには、できるだけ早めに贈与を始めるのがポイントとなります。ただし、相続する財産が多い人は、贈与税はかかりますが110万円以上を贈与した方がおトクなケースもあるので気を付けましょう。
住宅取得資金贈与で最大1,110万円まで贈与する
子や孫に住宅取得のための資金を贈与する時に、省エネ等住宅の場合を取得する場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までなら税金がかからない制度があります。
住宅取得資金の贈与と110万円の暦年贈与を併用することで、最大1,110万円までが非課税となります。
省エネ等住宅にはいくつかの条件がありますし、こちらの制度を利用するためには、住宅を取得する人や、取得する建物によっても様々な要件が決められていますので、要件をすべて満たしているかよく確認しておきましょう。
また、こちらは令和8年12月31日まで一時的に対応される法律(以下、時限立法)なので注意が必要です。
子や孫に教育資金を贈与して、最大1,610万円まで贈与する
子や孫に教育資金(入学金・授業料・通学交通費・塾代など)を贈与する時に、1,500万円までなら税金がかからない制度があります。
教育資金の贈与と110万円の暦年贈与を併用することで、最大1,610万円までが非課税となります。教育資金の贈与をする際は、以下の4つのポイントに注意しましょう。
- 教育資金贈与の受け取り対象となるのは30歳未満と決められている
- 30歳になった時点で1,500万円を使い切っていなかった場合、残額は課税対象となる
- 学校の入学金・授業料などは1,500万円まで非課税となるが、塾・ピアノなどの習い事は500万円までと決められている
- 贈与金額を使い切らずに贈与者が亡くなった場合、贈与を受けた者がその時点で23歳以上かつ学校等に在学していない場合には、残額が課税対象となる
なお、こちらは令和8年3月31日までの時限立法なので注意が必要です。
20~49歳の子や孫に結婚・子育て資金を最大1,110万円まで贈与する
子や孫が結婚・出産・子育てに必要な資金を贈与する時に、1,000万円までなら税金がかからない制度があります。結婚・子育て資金贈与と110万円の暦年贈与を併用することで、最大1,110万円までが非課税となります。
子育て資金と似たものに先述の教育資金がありますが、前者には子の医療費やベビーシッターなどが、後者には学校の授業や習い事など個人の能力を高めるために必要なものが含まれています。
結婚・子育て資金を利用する際は、以下の3つのポイントに注意しましょう。
- 結婚・子育て資金贈与の受け取り対象となるのは18歳以上50歳未満と決められている
- 結婚関連費用は300万円までが非課税となる
- 教育資金贈与と違い、贈与者が亡くなった時点で残額がある場合は、残額が相続税の対象となる
なお、こちらは令和7年3月31日までの時限立法なので注意が必要です。
おしどり贈与で配偶者に住宅を最大2,110万円まで贈与する
おしどり贈与とは、居住用の不動産や配偶者の住宅購入を援助する際の金銭について2,000万円まで贈与税がかからない制度です。
おしどり贈与と110万円の暦年贈与を併用すると、最大2,110万円までが非課税となります。おしどり贈与を利用する際は、以下の2つのポイントに注意しましょう。
- おしどり贈与の対象となるのは結婚20年以上の夫婦である
- 贈与を受けた居住用不動産や贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に現実に住んでいる必要がある
相続時精算課税制度を利用して土地の評価額を下げる
相続時精算課税制度を利用して収益不動産を贈与すれば、大幅な生前対策になります。
相続時精算課税制度とは、生前贈与額が2,500万円までなら贈与税は非課税となり、相続税申告の時に生前贈与額を財産として加算する制度です。
相続税を計算する時は、被相続人(財産を残す人)が亡くなった時に受け取った財産と生前贈与された財産を合わせて計算することになります。
例えば、被相続人が亡くなった際に7,000万円の遺産を所持していて、生前に1,500万円の相続時精算課税制度を使った贈与を行っていた場合、7,000万+1,500万=8,500万円を財産の総額として相続税を計算することになります。
相続時精算課税制度を利用するメリットとして2つ挙げられます。
贈与以後に発生する不動産収入は相続人が受け取ることになるので、贈与者の相続財産に加算されない
相続が発生するまで貸付用の不動産を被相続人が所有していると、不動産収入で得た金額が亡くなった時点で手元に残っている場合、被相続人の財産としてそちらにも相続税が課されます。
一方で、生前に贈与しておけば、相続人が所有することになるため、その後受け取る不動産収入は相続人の財産となり、相続税が課されることはありません。
相続時に加算される財産金額が贈与時の評価額である
もし被相続人が生前に子や孫に評価額1,000万円の土地を贈与していて、相続時に評価額2,000万円の土地になっていたら大幅に税金を抑えることができます。
さらに、2024年より相続時精算課税制度にも毎年110万円の基礎控除額が設定されたため、贈与した土地の評価額を110万円下げることが可能です。
- 贈与時の評価額:1,000万円ー基礎控除110万円=890万円
- 地価が上がって、2,000万円に値上がりした場合、相続が発生したときの評価額:2,000万円
これから評価額が上がりそうな土地であるかを見極めることがポイントです。
アパート・マンションなどの不動産を賃貸経営する
アパート・マンションなどの不動産を賃貸経営を行うことで、相続税の対策になります。同額の財産(現金)より土地の方が評価額が低くなるからです。
例えば、相続時に現金を3,000万円保有していたとしたら、そのまま評価額3,000万円で相続税を計算しなければなりません。
しかし、時価が3,000万円の土地を保有していた場合、相続時の評価額は8割程度に下がり2,400万円程度に評価額を圧縮することができます。
また、賃貸していると、小規模宅地の特例等の制度を活用してさらに50%以上評価額が下がる可能性があります。ただし、アパート・マンション経営は相続税の対策としては有効ですが、入居率が下がると家賃収入も一緒に減って赤字になりかねないので注意が必要です。
養子縁組で法定相続人の数を増やす
養子縁組で法定相続人の数を増やすことも相続税の対策になります。
相続税の計算を行うとき、一定の額までは相続税がかからない相続税の基礎控除額というものがあります。基礎控除額は、3000万円+600万円×法定相続人の数で求められます。
この法定相続人には養子も含まれるため、1人増えれば600万円も基礎控除額を増やせますので、基礎控除額が増えれば自動的に相続税を抑えることができます。
また、養子縁組をすれば基礎控除額に限らず、死亡保険金・死亡退職金の非課税枠も広がります。
- 死亡保険金…被相続人が生命保険の被保険者の場合、死亡に起因して受取人に支払われる保険金
- 死亡退職金…被相続人の死亡に起因して、勤めていた会社から相続人に支払われるお金
死亡保険金・死亡退職金の非課税枠は、500万円×法定相続人の数で算出します。
被相続人が亡くなった時点で財産が8,000万円(預金5,000万円、死亡保険金1,500万円、死亡退職金1,500万円)、相続人が妻と子供1人だった場合を考えてみましょう。
相続人:妻、子供1人 | 相続人:妻、子供1人、養子1人 | |
基礎控除額 | 4200万円 | 4800万円 |
死亡保険金・死亡退職金の合計 | 2000万円 | 3000万円 |
課税対象額 | 1800万円 | 200万円 |
まず、養子がいない場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×2人=4,200万円となります。
8,000万円ー4,200万円=3,800万円が課税対象となりますが、ここで死亡保険金と死亡退職金の非課税枠を全額利用することができたら、どちらも500万円×2人で1,000万円ずつ、計2,000万円が非課税となります。
最終的に、3,800万円ー2,000万円=1,800万円が課税対象となります。
同じ計算を、今度は養子を1人増やして行います。
- 基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
- 死亡保険金の非課税枠:500万円×3人=1,500万円
- 死亡退職金の非課税枠:500万円×3人=1,500万円
- 課税対象額:8,000万円ー(4,800万円+1,500万円+1,500万円)=200万円
養子がいない場合の課税対象額1,800万円と、養子がいる場合の課税対象額200万円で比較すると、養子がいる場合だと1,600万円課税される金額を下げることができます。
ただし、養子縁組をする際は以下のことが決まっているため、注意が必要です。
- 実子がいる場合は養子が1人まで
- 実子がいない場合は養子が2人まで
また、いわゆる孫養子の場合には、その孫養子に係る相続税は2割加算されてしまうので、併せて注意が必要です。
お墓や仏壇を生前に購入する
被相続人(財産を残す人)がお墓や仏壇を生前から購入しておくことで、相続税を減らせます。お墓や仏壇は、非課税財産として認められているため相続税がかかりません。
しかし、これは生前に購入した場合に限ります。被相続人の死後にお墓や仏壇を購入した場合は、税金がかかってしまいます。
また、お墓は安いものでも100万円ほどはかかりますが、ローンで購入したとして、被相続人の死後もお墓の代金を支払えていない場合は税金がかかってしまうので気を付けましょう。
なお、金の仏像など換金価値があり投資対象となりうるものについては、非課税とはならないので併せて注意が必要です。
相続税の対策 まとめ
いかがだったでしょうか。
本記事では、相続税を大幅に少なくするための対策法10選について詳しく解説しました。
【相続税を少なくするための対策法10選】
◉生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)の範囲で生命保険に加入する
◉毎年110万円を子や孫に贈与する
◉子や孫に教育資金を贈与して、最大1,610万円まで贈与する
◉20~49歳の子や孫に結婚・子育て資金を最大1,110万円まで贈与する
◉おしどり贈与で配偶者に住宅を最大2,110万円まで贈与する
◉相続時精算課税制度を利用して土地の評価額を下げる
◉アパート・マンションなどの不動産を賃貸経営する
◉養子縁組で法定相続人の数を増やす
◉お墓や仏壇を生前に購入する
監修者情報
徳永 和喜(公認会計士)
高校卒業して就職後、一念発起して公認会計士試験合格。
2018年から株式会社better創業メンバー取締役としてbetter相続Webアプリケーション開発に従事。公認会計士/税理士とエンジニアを兼務しながら、相続税申告の案件にも携わる。
2022年10月、経営統合により辻・本郷ITコンサルティング株式会社の執行役員就任。better相続事業部長として、自分で相続税申告や相続登記を行う方へより良いサービスの提供を目指している。