【2024年最新版】相続登記を自分でやる完全ガイド!必要書類なども解説

不動産を相続すると、相続登記をしなければならないことは、ご存知の方が多いでしょう。

相続の登記は期限が決まっているわけではありません。いまのところ、相続登記は義務でもありません。ただ、いつまでも相続登記をせずに放置していると、さまざまな不都合が生じます。

「でも、相続登記したいけれど、司法書士に頼むと高そうだし…」「自宅の土地と建物だけだから、自分で相続登記できないかな?」

と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか?

政府も自発的な相続登記をうながすため、法務局のホームページの充実や、相談体制を整えています。

この記事では、相続登記を自分で行うためのノウハウを徹底的に解説! 必要書類、書類取り寄せに掛かる時間や費用、公的な相談窓口など、ポイントを押さえてお伝えします。また、一般の方が間違えやすい相続登記手続きの解説も満載します。

相続登記をしなければならない方、遺産相続の予定がある方は、ぜひ、参考にしてください。

相続登記を自分で行うなら『better相続』

1. まずはここから!自分で相続登記を行うための基本知識

まずは、自分で相続登記を行う際にまず知っておくべき知識をお伝えします。

1-1. 簡単な相続登記、難しい相続登記

以下の条件に当てはまる人は、ご自分で問題なく相続登記ができると考えられます。

■ 自分で登記しやすい
・相続人が自分ひとりの場合や配偶者と子どものみなどのシンプルなケース
・平日の日中に役所に行く時間が取りやすい
・わからないことは自分で調べて対処できる

反対に、以下に該当する方は、自分で相続登記をするには難しい場合があるかもしれません。

■ 自分で登記が難しい
・不動産の権利関係が複雑である(誰の持ち物かわからない)
・被相続人の名義だと思っていたら被相続人以外の名義だった(数次相続)
・不動産の売却予定などがあって登記手続きを急ぎたい

自分で相続登記を行うのが難しいケース

まず第一に、相続不動産の権利関係が複雑である場合、ご自分で手続きをするのは困難だと考えられます。誰がどれくらいの不動産を所有しているかわからない状況を解決するために、過去の登記簿謄本をすべて確認し、権利関係を紐解く必要があるからです。

次に、被相続人の親の相続で相続登記していなかった場合、まずその手続きをしなくてはなりません。その場合は必要書類が期限を過ぎていて取得できない、また旧民法に沿う必要があるなど、とても複雑になってしまう可能性があります。

さらに不動産売却の予定が決まっている場合は、不備があって期限までに登記できないと影響が出てしまいます。このように専門家に依頼したほうがよいケースもありますので、ご自分で相続登記ができるかどうかの判断基準にしてください。

1-2. 相続登記「3つ」のパターン

相続登記にはさまざまなパターンがあります。主なパターンは以下の3つです。

■ 相続登記のパターン
① 遺言書で指定された相続人が相続する
② 法定相続分どおりに相続する
③ 遺産分割協議をしてそれぞれの相続分を決める

それぞれのパターンについて説明します。

① 遺言書で指定された相続人が相続する

遺言書で相続する場合

相続が発生したら、まず遺言書があるかどうかを確認します。遺言書がある場合は、原則として遺言で指定された相続人が相続をすることになります。ただし、必ず遺言書どおりにしなくてはいけないわけではありません。

相続人で遺産をどのように相続するかを決める「遺産分割協議」という話し合いをして、全員がその内容に同意すれば、遺産分割協議で決めた割合で相続することが可能です。

けれど、もし一人でも遺言書に従うことを希望する場合は、遺言が優先される点に注意しましょう。

② 法定相続分どおりに相続する

法定相続分で相続する場合

遺言書がない場合は、「➁法定相続分どおり」か「➂遺産分割協議をする」のどちらかで相続をします。「法定相続分」とは法律で決められた割合のことです。

配偶者がいる場合は、配偶者に加えて第一順位から法定相続人が決まります。子どもがいる場合は「配偶者と子ども」、子どもがいない場合は「配偶者と被相続人の親(親がいなければ祖父母)」、子どもも親もいない場合は「配偶者と兄弟姉妹」の順番です。

順位 相続人
常に相続人 被相続人の配偶者
第一順位 被相続人の子(子がすでに死亡している場合は孫)
第二順位 被相続人の親(親がすでに死亡している場合は祖父母)
第三順位 被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹がすでに死亡している場合は甥・姪)

また割合は、以下のように決められています。

■ 法定相続割合
◯ 配偶者と子どもが相続人の場合
→ 「配偶者1/2、子ども(全員で)1/2」
◯ 配偶者と被相続人の親・祖父母が相続人の場合
→ 「配偶者2/3、親または祖父母(全員で)1/3」
◯ 配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
→ 「配偶者3/4、兄弟姉妹(全員で)1/4」
※両親の一方を異にする兄弟姉妹は、両親を同じくする兄弟姉妹の2分の1の割合

法定相続分で相続をすると、遺産分割協議なしですぐ手続きに入れますが、ひとつの土地に複数の名義人がいるとデメリットも生じます。

まず「売却には名義人全員の同意が必要なので手間がかかる」点、そして「次に相続が発生した場合に複雑になる」点です。

これらのデメリットを考えると、法定相続分での相続はあまりおすすめできません。

③ 遺産分割協議をしてそれぞれの相続分を決める

相続人で協議をして相続する場合

このように法定相続分での相続は、あとのことを考えると選択しないほうが無難です。

遺言書がない場合は、「遺産分割協議をしてそれぞれの相続分を決める」方法を選択したほうがよいと言えます。

1-3. 相続登記をしないデメリット

相続登記をしないままだと、以下のようなデメリットが発生します。

■ 相続登記をしないデメリット
・不動産の売却ができず、担保にした融資も受けられない
・年月が経ち相続人が死亡すると、第2第3の相続が発生して非常にややこしくなる
・年月が経つと必要書類が入手できなくなる可能性がある

不動産を売却する際には、登記簿上の所有者から新しい所有者へ所有権移転登記をします。このとき土地の所有者と売却者が一致しないと、売却をすることができません。

また年月が経つことによるデメリットも挙げられます。

すぐに相続登記をしていれば自分でもできる内容だったのに、放置したせいで専門家に依頼することになり費用がかかってしまうということも考えられるでしょう。

1-4. 相続登記にかかる期間と費用

相続登記にかかる期間と費用

相続登記では、必要書類を集めるための時間がかかるのが特徴です。

とくに亡くなった人の出生から死亡までの戸籍をそろえるには、1~2ヶ月ほどかかる場合があるかもしれません。書類がそろって法務局に申請書を提出した後は、1週間~10日ほどで登記が完了します。

また相続登記の申請には、必ずかかる費用があります。主なものは「登録免許税」で、固定資産評価額の0.4%の税金を納めることが必要です。もし2,000万円の不動産なら、8万円かかる計算になります。

ほかにも申請に必要な戸籍謄本や住民票などに、合計数千円ほどかかるでしょう。郵送でやり取りする場合には、郵便代も必要です。

なお、自分で申請した場合にかかる費用はほぼ上記のみですが、専門家に依頼した場合はこれらの費用にプラスして報酬も必要になります。

自分で安く行いたい、簡単にできるシステムで時間を短縮したい方は『better相続登記』のご利用をおすすめします。相続登記を自分で行うなら『better相続』

2. 相続登記の全体の流れ

基礎知識を知ったところで、相続登記の全体の流れの説明に入ります。

相続登記の手順は、大きく5つのステップに分かれます。なお戸建ての場合は、土地と建物のそれぞれで相続登記が必要です。

相続登記自分でガイド_流れ

2-1. 【ステップ1】相続物件を特定する

【ステップ1】相続物件を特定する

自宅や投資物件など、被相続人が所有していた不動産を特定しなければなりません。

よくある注意点として、戸建ての場合は「土地」と「建物」は別の不動産として登記します。土地が数筆にわたっている場合や、建物が数棟あるケースも考えられます。

また、分譲マンションは、物件の特定に注意が必要です。建物と土地が一体化されていれば(敷地権の登記)、建物の登記事項証明書を取り寄せれば足ります。

しかし、敷地権の登記がなされていなければ、分譲マンションの建物と土地の登記事項証明書は別々に取り寄せなければなりません。

分譲マンションの敷地は数筆にわたる場合も多く、固定資産税納税通知書、建物の登記事項証明書の共同担保目録や、固定資産評価証明書をたよりに、敷地の地番を確定しましょう。

なお、物件の特定は被相続人が保管していた以下のものを参考にします。

■ 物件の特定で参考になるもの

・登記事項証明書(かつての登記簿謄本)(管轄法務局または最寄りの法務局)
・登記済権利証や登記識別情報、登記完了証
・固定資産税納税通知書
・市町村の名寄帳(被相続人の最後の住所地の市区町村)

不動産以外にも相続する遺産があるケースも多いので、名寄帳を取り寄せ、預貯金なども確定しておくと便利です。

■ 登記事項証明書の取得方法

◆ 必要な情報
土地なら「地番」、建物なら「家屋番号」
※地番や家屋番号は、「登記済権利証」や「固定資産税納税通知書」の明細書でわかります。法務局で住所から調べることも可能です。

◆ 発行手数料
一通600円

◆ 発行場所
最寄りの法務局(対象不動産の管轄外でもOK)
※郵送で取り寄せる場合は以下をそろえて送りましょう。
・交付申請書(法務局のサイトからダウンロード可 http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/000130851.pdf
・額面分の収入印紙
・切手を貼った返信用封筒
※オンラインでの申請も可能。詳しくは法務局のホームページをご覧ください。(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/online_syoumei_annai.html

2-2. 【ステップ2】被相続人の戸籍謄本などの取り寄せ

次に、戸籍関係および住民票の除票を取り寄せます。

これも、1つでも欠けると登記にかぎらず、株式、預貯金などの相続手続きもとどこおるので、慎重に行いましょう。

ただし、後述の通り、戸籍関係は、下記のケースでは相当取り寄せに時間がかかるので、相続税申告や不動産売却を急ぐケースでは、十分に注意して下さい。

■ 戸籍をたどるのが大変なケース
・被相続人の転籍が多い
・被相続人が離婚・再婚の経験がある
・被相続人の本籍地、転籍前の本籍地が遠方
・法定相続人の数が多くなる可能性がある(離婚前の子、婚外子、兄弟姉妹、おい、めいなどが相続するケース)

 

2-2-1. 被相続人の戸籍謄本など

被相続人の戸籍謄本などの取り寄せは時間と手間がかかるので、根気よく行いましょう。

被相続人の戸籍(除籍)謄本(出生から死亡まですべて)

取得理由 相続が発生したことを証明するため
申請できる人 配偶者・直系血族・代理人(委任状が必要)
取得窓口 本籍があった市区町村役場
必要費用 除籍謄本750円、戸籍謄本450円 ※
取得に必要な書類など 申請書(窓口にあります)、身分証明書

(郵送の場合は)定額小為替と切手付きの返信用封筒

※条例によって金額が異なる場合があります

戸籍謄本サンプル

一番時間がかかるのは、被相続人の出生から死亡までの戸籍集めです。

妻や子の有無、またその人数の確認に使用します。お遺言書による相続の場合は、死亡時の戸籍謄本のみでかまいません。

まず被相続人の本籍地が書かれた住民票で最後の本籍地を調べて、そこで被相続人の戸籍謄本を取りましょう。

2-2-2. 被相続人の除籍謄本と改製原戸籍

戸籍謄本の「戸籍事項」の欄に「転籍」と記載がある場合は、次に「従前本籍」の役所で除籍謄本を取得します。

戸籍にはひとつ前の本籍しか記載されていないので、このようにひとつずつたどらなくてはいけない点に注意が必要です。

また、法令改正により戸籍の形式が縦書きから横書きに変更になりました。そのため「戸籍事項」の欄に「戸籍改製」と記載がある場合は、同じ本籍地で改製前の「原戸籍」を取得する必要があります。

相続手続き完全ガイド2020_原戸籍取得

このように「転籍」「改製」そして「婚姻」の記載をひとつずつたどって確認し、出生までの戸籍を取得しましょう。なお戸籍謄本は、郵送での取り寄せも可能です。

■ 戸籍謄本を窓口で取得する方法

被相続人の本籍があった市区町村役場の窓口に行って手続きをします。手続きに行く際は、以下のものを忘れずに持参しましょう。

本人と同じ戸籍ではない代理人が行く場合は、委任状が必要です。

◆ 必要書類
・印鑑(認印でOK)
・請求者の本人確認書類 (運転免許証・パスポート・マイナンバーカード・写真がついた住民基本台帳カードなど)
・発行手数料(戸籍謄本450円、除籍謄本・原戸籍謄本750円)
・(代理人が行く場合のみ)委任状と代理人の本人確認書類

■ 戸籍謄本を郵送で依頼する方法

以下を封筒に入れ、各市区町村役場の戸籍課などに郵送して依頼しましょう。

◆ 必要書類
請求書(各役所にフォーマットがあればそれを使用。必要事項を便箋に手書きしたものでOKの場合もあり)
・身分を証明できるものの写し(免許証のコピーなど)
・定額小為替(郵便局で購入)※収入印紙ではありません!
・返信用封筒

◆ 発行手数料
一通につき戸籍謄本は450円、除籍謄本や原戸籍謄本は750円です。

◆ 注意事項
郵送の場合、発行手数料は定額小為替で納めます。郵便局の貯金窓口で購入しましょう。

※ただし、小為替は1通ごとに手数料がとられます。郵送で戸籍謄本などを取り寄せる場合、必要な額面を超える額の小為替を郵送すると、戸籍謄本などを発行してもらえない場合もありあます。

必ず詳しく、市区町村役場に確認しましょう。また、返信用封筒には宛先を記入し、切手も貼りましょう。

2-2-3. 被相続人の住民票(除票)

住民票の除票とは、被相続人の最後の住所地が発行する書類です。必ず本籍地も記載してもらってください。保存期間は削除された年から5年間なので、注意が必要です。

被相続人の住民票(除票)

取得理由 登記上の所有者と亡くなられた方が同一の人物であることを証明するため
申請できる人 同一世帯者・代理人(委任状が必要)
取得窓口 最後の住所地の市区町村役場
必要費用 300円ほど(市区町村によって異なる)
取得に必要な書類など 申請書(窓口にあります)、身分証明書

 

住民票サンプル

ただし住民票の除票には、最後の住所とその前の住所しか記載されません。下記のような場合には、不動産取得時の住所が載らないことになります。

■ 不動産取得時の住所が載らないケース

東京に住んでいるときに不動産を取得(=登記上の住所)

静岡に引っ越しをして住民票を移動

広島に引っ越しをして住民票を移動したのちに亡くなる

 

この場合、住民票の除票に記載されるのは広島と静岡の住所です。もっと過去の住民票をさかのぼって、登記上の住所地である東京とのつながりを証明する必要があります。

ただ、住民票の除票の保存期間は5年です。静岡から広島へ引っ越したのが5年以上前だと、静岡で住民票の除票を取得することはできず、東京とのつながりが証明できません。

このような場合は、被相続人の本籍地の役所で「戸籍の附票」を取得しましょう。戸籍の附票には、その戸籍が作られてから現在までの住所がすべて記載されています。登記上の住所も載っている可能性があります。

登記名義人の登記上の住所と死亡時の住所が違う場合で、被相続人の住民票の除票も戸籍の附表も保存期間が過ぎているケースもあります。その場合は以下の方法があります。

■ 被相続人の住民票の除票も戸籍の附表の代わりに添付できるもの

・相続不動産の登記権利証や登記識別情報
・市区町村が発行する不在籍不在住証明書

詳しくは不動産の管轄法務局によって異なる場合がありますので、まずは法務局に相談してみましょう。

 

2-3. 【ステップ3】相続人の確定、書類取り寄せ

ステップ2で取り寄せた被相続人の戸籍謄本や除籍謄本(被相続人の出生まで)を全て正確に確認したうえで、相続人を確定します。

家族が知らない相続人がいるケースがあるので、十分に注意して下さい。法定相続人については後述します。

2-3-1. 相続人の戸籍謄本や住民票

相続人が確定すれば、相続人の戸籍謄本や住民票を取り寄せます。

なお、住民票については、不動産の名義人になる者のみでかまいません。

 

法定相続人の戸籍謄本

取得理由 被相続人の死亡時点で法定相続人が生存していたことを証明するため
申請できる人 本人・同一世帯者・代理人(委任状が必要)
取得窓口 本籍がある住所地の市区町村役場
必要費用 一通450円
取得に必要な書類など 申請書(窓口にあります)、身分証明書

被相続人が死亡した時点で、相続人が生存していたことを証明するために必要です。複数人いる場合は、それぞれ取得してもらいましょう。なお遺言書に従った相続では、相続する人の戸籍謄本だけが必要になります。

 

相続で登記名義人になる人全員の住民票

取得理由 相続人の住所を証明するため
請できる人 本人・同一世帯者・代理人(委任状が必要)
取得窓口 住所地の市区町村役場
必要費用 300円ほど(市区町村によって異なる)
取得に必要な書類など 申請書(窓口にあります)、身分証明書

不動産を相続する人の住所を証明します。必ず本籍が入っているものを取得しましょう。なお複数人で取得するときは、その全員分の住民票が必要です。

2-4. 【ステップ4】遺産分割協議、遺産分割協議書の作成

2-4-1. 遺産分割協議に必要となる書類

遺産分割協議に必要になる書類

登記を行うためには、財産を誰が取得するのかを相続人同士で話し合い、所定の方法で遺産分割協議書を作る必要があります。これを申請書類として添付する必要があります。

なお、相続登記における遺産分割行書は、相続財産すべてについて記載されている必要はなく、対象の不動産のみが記載されたものでも問題ありません。

遺産分割協議書

相続人が法定相続分ではなく、遺産分割協議によって決められた割合で不動産を相続する場合に、作成が必要です。

指定された書式はありませんが、記載すべき事項はある程度決まっています。こちらから遺産分割協議書の雛形をダウンロードしていただけますので、ご利用いただければ幸いです。

better相続登記では、法務局のフォーマットに応じた協議書を自動で作成できます。相続登記を行う不動産の遺産分割協議書が必要な方はご利用をご検討ください。
※数次相続の協議書には対応しておりませんが、遺産分割協議書のフォーマットをダウンロードできます。
※不動産以外の財産については対応しておりません。

相続登記を自分で行うなら『better相続登記』

相続人全員の印鑑証明書

取得理由 遺産分割協議書に押印した実印を証明するため
申請できる人 本人・代理人
取得窓口 実印を登録している市区町村役場
必要費用 300円ほど(市区町村によって異なる)
取得に必要な書類など 印鑑登録証、身分証明書

遺産分割協議書に押印した印鑑が実印であることを証明します。不動産を取得する方以外に、遺産分割協議書に載っている相続人全員の分が必要なので、各自取得してもらいましょう。

なお、法定相続人の一人でも欠けた遺産分割は無効です。登記できませんので、注意しましょう。

 

2-5. 【ステップ5】相続登記申請書の作成・申請

必要な戸籍謄本等の収集、相続人の確定、遺産分割協議書作成が終ったらいよいよ登記の申請です。登記は口頭では受付されません。必ず登記申請書を作成しましょう。

2-5-1. 登記申請に必要になる書類

登記申請書

登記申請書サンプル

相続登記の申請に必要です。法務局のホームページで、ひな型がダウンロードできます。

登記申請書のひな型と記載例
法務局のホームページ「不動産登記の申請書様式について」にある「登記申請書の様式及び記載例」の中から、相続のパターンによって該当する番号を選択しましょう。
● 遺言書(公正証書)で相続
→18)所有権移転登記申請書(相続・公正証書遺言)
● 遺言書(自筆証書)で相続
→19)所有権移転登記申請書(相続・自筆証書遺言)
● 法定相続分で相続
→20)所有権移転登記申請書(相続・法定相続)
● 遺産分割協議で相続
→21)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)

なお、共通する作成ルールは以下になります。

■ 登記申請書の作成ルール

・申請書はA4の用紙で作成する
・文字は印字でも手書きでもOK。どちらも黒ではっきりと記載。鉛筆は不可
・登録免許税の収入印紙は、貼り付けた紙を申請書と一緒にホチキス留めする。なお収入印紙には、割印や消印はしないので注意すること!
・申請書、収入印紙を貼った用紙、ほかの添付書類(原本還付してもらう場合はコピー)を一緒にして左側2カ所をホチキスで留め、各用紙の綴り目に割印をする
・原本還付を希望する場合は、申請書にはコピーを綴じ、原本はクリアファイルなどにまとめて提出する

なお法務局では、相続登記についての相談もできます。予約が必要な場合もありますので、事前に確認しておきましょう。
またひとり20分など、相談時間が決められていることも多いです。ですから、ある程度書類の準備や作成ができて、不備のチェックやわからない点を質問するために利用するのがおすすめです。
質問内容も整理しておくと、相談時間を有効に使うことができるでしょう。

『better相続登記』は質問に答えるだけで登記申請書を作成できるサービスです。司法書士のノウハウをシステムに落とし込み、初めての方でも簡単に相続登記ができます。

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2-5-2. 固定資産評価証明書

不動産の相続登記をするには、固定資産評価証明書または課税明細書が必要です。

課税明細書または固定資産評価証明書

課税明細書 固定資産評価証明書
取得理由 登録免許税を計算するための「固定資産税評価額」を確認する
申請できる人 所有者・所有者の相続人・代理人(委任状が必要)
取得窓口 (毎年届く固定資産税の納税通知書に同封されている) ・東京都の23区→都税事務所

・それ以外の市区町村→役所の資産税課など

必要費用 300円ほど

(自治体や不動産の数などによって異なる)

取得に必要な書類など ・申請書(窓口にあります)

・身分証明書

・(相続人が請求する場合)「所有者の死亡年月日が記載されている除籍謄本など」、「相続人自身の戸籍謄本など」、「相続人本人の身分証明書」

※自治体によって異なる

課税明細書サンプル

(参考)固定資産評価証明書

固定資産評価証明書サンプル

これは、登録免許税を計算するための「固定資産税評価額」の確認に必要です。

また、相続登記の申請時には、課税明細書のコピーもしくは固定資産評価証明書の原本を登記申請書に添付します。どちらか一方を用意しましょう。

どちらの場合も注意したいのは、亡くなった年度ではなく、登記を申請する年度のものが必要なことです。申請するタイミングで最新のものを準備してください。

課税明細書は、毎年届く固定資産税の納税通知書に同封されています。課税明細書がない場合は、固定資産評価証明書を取得しましょう。相続する不動産がある自治体で発行してもらえます。

東京都の23区では都税事務所、それ以外の市区町村では役所の資産税課などが窓口です。自治体によって発行手数料や必要書類が違うため、ホームページなどできちんと確認しましょう。郵送で依頼することも可能です。

マンションのように登記上一体となっている場合も、そうでない場合も、必ず敷地部分と家屋部分の両方が記載された固定資産評価証明書を取得しましょう。

2-5-3. 収入印紙(登録免許税の計算)

登録免許税の納付に必要です。金額を算出したら、郵便局などで購入しましょう。計算式は以下になります。

登録免許税 = 固定資産評価額 × 0.4%

固定資産評価額とは、必要書類にある「課税明細書」もしくは「固定資産評価証明書」に記載されている「評価額」のことです。評価額は1,000円未満を切り捨てます。また算出した登録免許税は100円未満が切り捨てです。

たとえば、評価額が12,345,432円である土地の登録免許税はこのような計算になります。

■ 登録免許税の算出の例
12,345,000円×0.4%=49,380円
→ 100円未満切り捨てのため、登録免許税は「49,300円」

2-5-4. 原本還付の手続きをする場合に追加で必要な書類

原本還付とは、登記完了後に添付した書類を返してもらう手続きです。原本還付の手続きをしないと戸籍謄本などの添付書類は返却してもらえませんので、注意しましょう。

添付書類は、銀行での相続手続きなどでも使用するため、還付の手続きをしておくことをおすすめします。原本還付の手続きに必要なものは、以下の3点です。

① 相続関係説明図

相続関係説明図

戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍謄本については、コピーを添付する代わりに「相続関係説明図」を作成して提出すれば、原本を返却してもらえます。

こちらの4ページ目に記載例がありますので、参考にしてください。(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001365932.pdf

相続関係説明図や書類のコピーを、原本と一緒に提出します。コピーは1枚目に「下記は原本に相違ありません」と記載し、その下に署名と押印をしましょう。そして登記申請書・相続関係説明図・原本のコピーをまとめてホチキスでとめ、ページの間に割印をします。

なお原本はホチキスどめをせず、クリップやクリアファイルなどにまとめて一緒に提出してください。

 

② 提出書類のコピー(原本還付を希望する書類)

戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本以外の書類は、原本と一緒にコピーを添付すると、原本を返却してもらえます。

ただし、コピーすべてに申請者の住所・氏名、原本還付を求める旨を記載し、押印しなければなりません。また、書類が数葉に渡る場合は契印も必要です。

 

③ 切手を貼った返信用封筒

原本の返却や登記識別情報送付を郵送でお願いしたい場合は、切手を貼った返信用封筒を忘れずに用意しましょう。なお、窓口で受け取る場合は不要です。

 

原本還付の方法

これらの書類を「原本」と一緒に提出します。

還付を希望する書類のコピーは1枚目に「下記は原本に相違ありません」と記載し、その下に署名と押印をしましょう。

原本還付書き方

 

そして登記申請書・相続関係説明図・原本のコピーをまとめてホチキスでとめ、ページの間に割印をします。

原本還付書類①

なお原本はホチキスどめをせず、クリップやクリアファイルなどにまとめて一緒に提出してください。

 

2-5-5. 法務局に相続登記の申請する

法務局に相続登記の申請する

すべての必要書類がそろったら、法務局で申請しましょう。申請は、名義変更をする不動産の所在地を管轄する法務局で行います。法務局のホームページに管轄が載っていますので、こちらで調べてください。

また申請には、3通りの方法があります。

① 直接法務局へ行って申請する

メリットは、修正があってもその場ですぐに対応できる点です。申請書と添付書類、収入印紙、申請書に押印した印鑑を持参しましょう。

② 郵送で申請する

管轄の法務局へ郵送して申請することもできます。普通郵便ではなく、書留郵便かレターパックプラスで送りましょう。管轄の法務局が遠方の場合などに便利です。

③ オンライン申請する

オンライン申請については、法務省のホームページで詳しく説明されています。自宅で申請できるのが大きなメリットです。

けれども登記のための専用ソフトをインストールしたり、公的認証サービスを利用して電子証明書を取得する必要があったりするため、パソコン操作に自信がないと難しいかもしれません。

また添付書類は、オンライン申請の受付から2日以内に郵送か持参で提出しなくてはいけない点も注意しましょう。

 

2-5-6. 申請後の手続き

申請書を提出してから登記が完了するまでは、1週間~10日ほどかかります。登記完了予定日を過ぎたら、法務局へ書類を受け取りに行きましょう。受け取りには、以下のものが必要です。

■ 申請後の書類受け取りに必要な書類
・登記申請に使用した印鑑
・身分証明書

また、受け取る書類はこちらになります。

■ 受け取る書類
・登記識別情報通知書・・・・・・不動産ごと、また申請人ごとに1通ずつ発行されます。
・登記完了証・・・・・・・・・・登記が完了したことを証明する書類です。
・原本還付書類一式・・・・・・・原本還付の手続きをしていれば、返却してもらえます。

なお郵送での受け取り手続きをしている場合は、これらの書類が郵送で届きます。

3. 相続登記に必要な書類の一覧

相続登記の必要書類早見表

 

書類の名前

 

取得場所

 

費用

(一通)

必要なパターン
遺言書 法定相続分 遺産分割協議
被相続人の戸籍謄本 ※1 各本籍地の役所 450~750円
被相続人の住民票(除票) 最後の住所地の役所 300円
法定相続人の戸籍謄本※2 本籍地の役所 450円
相続で登記名義人になる人全員の住民票 住所地の役所 300円
課税明細書または固定資産評価証明書 (課税明細書は固定資産税納付通知書に同封で届くため取得不要)
固定資産評価証明書は役所の資産税課

(費用は自治体による)

300円ほど
登記申請書 (自分で作成)
収入印紙

(登録免許税の金額分)

郵便局、法務局など 金額分
遺産分割協議書 (自分で作成)
相続人全員の印鑑証明書 住所地の役所 300円
遺言書 (被相続人が作成)
相続関係図(任意) (自分で作成)
すべての書類のコピー(任意) (自分で作成) コピー代

※1「法定相続分」「遺産分割協議」の場合は被相続人の出生から死亡まですべての戸籍謄本、「遺言書」による相続の場合は死亡時の戸籍謄本のみ

※2「法定相続分」「遺産分割協議」の場合は相続人全員の戸籍謄本、「遺言書」により相続する場合は相続する人のみ

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4. 「遺言書」があるケース

4-1-1. 遺言書の検認手続き

最後に「遺言書があるケース」について、注意点を解説します。被相続人の遺言書は、相続登記の添付書類です。

もし公正証書遺言以外の形式での遺言には、遺言書の検認が必要です。検認は、遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造や変造を防止するための手続きです。

これは必ず行う必要がありますので、遺言書の開封前に家庭裁判所へ検認手続きを行い、検認証明書を発行してもらいましょう。

■ 遺言書の検認方法

まず管轄の家庭裁判所に検認の申し立てを行いましょう。そして通知された期日に遺言書を持って家庭裁判所へ行き、検認してもらいます。

◆ 申立先

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。裁判所のホームページで調べることができます(https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/kankatu/index.html)。

◆ 申立人
検認の申立人は、遺言書の保管者か遺言を発見した相続人になります。

◆ 申立てに必要な費用

検認に必要な費用は、遺言書(封書の場合は封書)1通につき収入印紙800円分です。また、家庭裁判所との連絡用に郵便切手も必要になります。各裁判所のサイトにある「裁判手続を利用する方へ」(https://www.courts.go.jp/courthouse/map/map_list/index.html)をご覧になるか、掲載がない場合は管轄の家庭裁判所へ確認してください。なお、検認後に検認証明書の申請をする場合は、その際に収入印紙150円分が必要です。

◆ 必要な書類

・検認申立書
書式や記載例については、裁判所のホームページをご覧ください。(https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_17/index.html
・遺言者の出生から死亡時までの戸籍謄本(除籍謄本)
・相続人全員の戸籍謄本/

◆ 検認手続きの流れ
申立てをしてから約1ヶ月後に、家庭裁判所から相続人全員に検認期日の通知が届きます。

当日に申立人は遺言書と印鑑を持参し、家庭裁判所の職員と出席した相続人の立ち合いのもと遺言書を開封して、日付や署名、内容などを確認します。確認後に検認調書が作成されて完了です。

検認証明書が必要な場合は、このときに発行の申請をしましょう。なお当日は、相続人に欠席者がいても検認手続きは行われます。ただし申立人は欠席できませんので注意しましょう。

5. 相続登記を自分でやる〜まとめ

相続登記は、簡単なケースであれば自分でもできることが、おわかりいただけたでしょうか。ある程度の手間はかかりますが、手順に沿って進めれば難しいものではなく、専門家に依頼するより費用も抑えられます。

ただ、戸籍の読み取りは非常に大変なケースがあります。戸籍謄本が30通にもなるケースや、明治初期の戸籍を読まなければならないこともあります。達筆で役所の人でも読むのが困難な戸籍もあります。

また、戸籍を正確に読まないと法定相続人を見過ごす可能性もあります。相続人が多かったり、遺産分割でもめていたり、相続財産が多い場合、有効な遺産分割協議書を作成するのは難しい作業です。

ご自身で相続登記をしたいけれども、ご不安な場合は、専門家に何らかの形でアドバイスを求めることをおすすめします。

相続登記で一番難しいのは申請書の書き方や書類の集め方ではありません。いかに争いのない相続で終えられるかが家族にとって大切です。

もし自分でやってみようと思った方は、こちらの完全ガイドを参考にして、ぜひ挑戦してみてください。

また、『better相続登記』を使って相続登記を自分で行った方の感想もございますので、合わせてご覧いただきますと幸いです。

自分でできる相続登記『better相続登記』

better相続登記を使って相続登記を自分で行った方の感想

監修者情報

監修者:德永和喜

徳永 和喜(公認会計士)

高校卒業して就職後、一念発起して公認会計士試験合格。

2018年から株式会社better創業メンバー取締役としてbetter相続Webアプリケーション開発に従事。公認会計士/税理士とエンジニアを兼務しながら、相続税申告の案件にも携わる。

2022年10月、経営統合により辻・本郷ITコンサルティング株式会社の執行役員就任。better相続事業部長として、自分で相続税申告や相続登記を行う方へより良いサービスの提供を目指している。

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