相続登記とは何か、費用や手続きの流れ、期限などをわかりやすく解説
不動産を相続した場合、相続登記を行う必要があります。初めて相続手続きを行う方だと「相続登記」とは何かわからない場合が多いです。
今回は相続登記とは何かわかりやすく解説します。また、相続登記を行う流れや費用、期限についても解説しますので、相続登記を行う際に役立てていただけますと幸いです。
目次
相続登記とはわかりやすく解説
相続登記とは、相続した不動産の名義を故人から相続人へ移転する手続きのことです。
不動産は法務局で管理する登記簿に記録されています。土地や建物の所在、面積、所有者の住所や氏名、担保の情報などが登記簿に記載されており、第三者に対して不動産の権利関係などを明らかにしています。
不動産を相続した場合、登記簿の情報を故人から相続人へ変更する「所有権の移転登記」を行います。これが「相続登記」となります。
相続登記を行うことで相続した不動産が相続人のものであることを証明できるので、不動産を担保にしたり、不動産を売却したりすることができます。
相続登記が必要となる人
相続登記が必要となる人は不動産を相続した人です。そのため、不動産を相続していない相続人は相続登記を行う必要はありません。
遺言書によって相続人以外へ譲渡する場合は「相続」ではなく「遺贈」となります。「所有権の移転登記」は必要ですが、「遺贈」による手続きを行うことになります。
相続登記の手続きの流れ
不動産を相続した場合、相続登記が必要になることを解説しました。
相続登記を行う際、どのような流れで手続きを行うのか解説します。
相続の対象となる不動産を把握する
相続人で財産を分ける、故人の所有していた不動産の名義をすべて変更するために、所有していた不動産をすべて把握することから始めます。
役所などで固定資産税評価証明書を取得し、課税対象となる不動産を把握します。課税対象とならない私道などがある場合は不動産登記済権利証や登記識別情報通知を確認します。不動産登記権利証などがない場合は、不動産の管轄の市区町村で名寄帳を取得して、不動産を把握します。
不動産を相続する人や方法を決める
故人が所有していた不動産をすべて把握した後、不動産を誰がどのように相続するのか決めます。
遺言書がある場合は、遺言の内容に従って不動産を相続します。遺言書がない場合や不動産について記載されていない場合は、誰が不動産を相続するのか話し合い、遺産分割協議書を作成します。
不動産の分割方法が決まった後は、不動産を相続する人が今後の相続登記の手続きを行います。
相続登記を行う方法を決める
不動産を相続することが決まったら、どのような方法で相続登記を行うのか決めます。
相続登記に関する手続きをすべて代行したい場合は司法書士へ依頼することをおすすめします。費用はかかりますが、書類の作成や登記申請書の作成などを代行してくれるため、時間や手間を省くことができます。
司法書士に依頼する費用を抑えたい方は自分で書類を集め、登記申請書を作成し、法務局へ提出を行います。相続内容などがシンプルな場合は自分で行うことをおすすめします。
『better相続登記』は知識がない方でも自分で相続登記を行うことができるシステムです。相続登記に必要な書類や情報の解説はもちろん、登記申請書や遺産分割協議書の作成機能もあるため、独学で行うよりも手間や時間を省くことができます。
相続登記に必要な書類の収集や作成を行う
相続登記を自分で行うか司法書士に依頼するか決まったら、書類の収集や作成を行います。
司法書士に依頼した場合は指示に従って書類を収集し、登記申請書を作成してもらいます。書類の収集も代行してくれますが、加算報酬となることが多いです。
自分で相続登記を行う場合は、必要資料や作成方法を調べ、自分ですべて行う必要があります。法務局のホームページで必要書類の情報や登記申請書のフォーマットを手に入れることができます。
必要書類 | 費用(一通) |
被相続人の戸籍謄本 ※1 | 450~750円 |
被相続人の住民票(除票) | 300円 |
法定相続人の戸籍謄本※2 | 450円 |
相続で登記名義人になる人全員の住民票 | 300円 |
固定資産評価証明書 | 300円ほど(自治体によって異なる) |
登記申請書 | 自分で作成 |
収入印紙(登録免許税の金額分) | 登録免許税の金額分 |
遺産分割協議書(必要であれば) | 自分で作成 |
相続人全員の印鑑証明書 | 300円 |
遺言書(故人が作成している場合) | – |
相続関係図(任意) | 自分で作成 |
すべての書類のコピー(任意) | コピー代 |
法務局へ相続登記の申請を行う
必要書類の収集や作成が完了したら、相続する不動産を管轄する法務局へ登記申請書と添付書類一式を提出します。司法書士に依頼した場合は法務局への提出も代行してくれます。
登記申請を行う際に登録免許税を納める必要があります。郵送などで法務局に提出する場合は事前に収入印紙を申請書へ貼り付けます。直接法務局へ提出する場合は窓口で収入印紙を購入し、その場で貼り付けることもできます。
提出から10日程度で相続登記が完了します。登記識別情報の通知や登記完了証を受け取ることができるので大切に保管してください。不備があった場合は訂正して再度提出を行います。
農地や山林を相続登記する時の注意点
農地や山林を相続する場合、相続登記以外の手続きも必要となります。
農地の場合は相続開始を知ってから10か月以内に市町村の農業委員会へ届出書と登記事項証明書の提出を行います。登記事項証明書を取得するには相続登記を先に行う必要があるため、10か月以内に相続登記を終わらせるように手続きを進めることをおすすめします。
山林を相続した場合は90日以内に市町村長へ届け出を提出する必要があります。届出の対象となるのは都道府県が地域山林計画に定めている山林です。都道府県や市町村へ地域山林計画に定めている山林かどうか確認し、対象であれば届け出の提出を行います。
相続した建物が未登記だった場合の相続登記
不動産の相続手続きを進める中で建物が未登記になっている場合があります。その場合、遺産分割協議書の作成までは相続登記の手続きと同じですが、建物を新たに登記しなければいけません。
未登記建物の表題登記は義務となっており、放置していると10万円以下の過料が科される可能性があります。
表題登記は必要な書類が多く、自分で行うのは非常に難しい手続きとなるため、専門家へ依頼することをおすすめします。土地の相続登記は自分で行い、表題登記は専門家へ依頼するとなるべく費用を抑えることができます。
表題登記は、建物の種類や構造・床面積といった建物の形状に関する登記です。建物を相続したことを証明するためには、表題登記完了後に所有権の登記が必要となります。
相続登記は自分で行うか司法書士に依頼する
相続登記は以上の流れで手続きを進めます。
手続きを進める上で司法書士に依頼するか、自分で行うのかを決める必要があります。どちらにどのようなメリット・デメリットがあるのか解説しますので、判断材料にしていただけますと幸いです。
司法書士に依頼するメリット・デメリット
司法書士に相続登記を依頼するメリットは手続きを代行してくれること、複雑な相続の場合でも対応してくれることです。それに対して相応の報酬を支払う必要があります。
それぞれ詳しく解説します。
相続登記の手続きを代行してくれる
相続登記は書類の収集や登記申請書の作成、法務局への提出など専門知識や手間、時間などを必要とする手続きです。
司法書士に依頼することで、登記申請書の作成など手間や時間などがかからずに済みます。また、追加報酬となることが多いですが、必要書類の収集なども代行してくれるため、相続登記に関する手続きを丸ごと任せることができます。
相続が複雑な状態でも相続登記ができる
何年も前に亡くなっていて住民票の除票などの書類が発行できない場合や、相続人が多くて戸籍などの書類を取得するのが大変な場合、数次相続・代襲相続といった2次相続などが発生している場合などは相続登記の手続きの難易度が高く、専門知識が必要となります。
そのような場合は自分で相続登記を行うことは非常に困難なため、司法書士へ依頼し、確実に相続登記を完了させることをおすすめします。
司法書士へ依頼した場合、相応の報酬を支払う
司法書士へ依頼すると専門知識を使って相続登記の手続きを完了してくれます。それに応じた報酬を司法書士へ支払う必要があります。
自分で相続登記を行った場合、必要書類を取得する・作成するなどのみで相続登記が完了するため、費用はそこまでかかりません。
司法書士へ依頼すると7~15万円ほどの報酬が発生します。相続の状況や書類収集の有無によって費用は変動します。メリット・デメリットを考慮して司法書士に依頼するか検討することをおすすめします。
独学で相続登記を行うメリット・デメリット
インターネットや書籍で情報を集め、独学で相続登記を行うこともできます。
独学で相続登記を行うメリットは費用を大きく抑えられることです。情報を得るために数千円、書類の収集や作成するために数千円の費用で相続登記を行うことができます。
デメリットはすべて自分で手続きを進めなければいけないことです。どのような書類が必要になるのか、どのように集めるのか、どのように申請書を作成して提出すればいいのかなど様々なことを自分で調べ、書類の収集や作成を行わなければいけません。
専門知識を自分で身に着ける力や時間があり、何度も法務局へ足を運ぶことができる方は独学で相続登記を行う選択肢もありだと思います。
システムを使って相続登記を行うメリット・デメリット
自分で相続登記を行いたいが、知識を身に着け、必要書類を作成する時間を確保できない方は『better相続登記』の利用をおすすめします。
『better相続登記』は司法書士のノウハウをシステムに落とし込んでいるため、相続登記の手続きが初めての方も簡単に自分で行うことができます。システムの案内に沿って書類を集め、情報を入力すると登記申請書と不動産に関する遺産分割協議書が自動で作成されます。
つまずきやすいポイントはシステム内で解説してあるので、自分で様々な情報を調べずに済みます。働きながらでも相続登記を自分で行いたい、初めてだから何かしらのサポートが欲しい方におすすめの方法となっています。
相続登記の手続きが完了するまでの期間
相続登記が完了するまでにかかる期間は必要書類を集めているかどうかで異なります。不動産の洗い出しや相続人調査が終わり、不動産登記簿謄本や戸籍謄本などが揃っている場合、登記申請書の作成から法務局へ提出、相続登記が完了するまで2週間~1か月で完了することが多いです。
不動産の把握から戸籍の収集、遺言書の検認などを行う必要がある場合、2~4か月ほどの期間がかかります。広域交付制度が始まり、戸籍の収集が簡単になったため、手間や期間が従来よりもかかりにくくなっています。
安く司法書士に依頼する場合でも書類は自分で取得しなければいけないため、期間はさほど変わりません。登記申請書はシステムを使うことによって司法書士に依頼する場合と同じくらいのスピードで作成できます。
なるべく短期間で相続登記を終わらせたい場合は司法書士へ書類の収集まで依頼することをおすすめします。そこまで急いでいない場合はシステムを使って自分で相続登記を行うことをおすすめします。
相続登記の期限
2024年3月31日以前は相続登記に期限がなく、亡くなった方の名義になっている不動産が多々ありました。所有者不明土地を減らすために国は相続登記を2024年4月1日から義務化し、相続の開始及び相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内を期限としました。
正当な理由なく3年以内に相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性もあります。
また、農地を相続していた場合、農業委員会へ届出書と登記事項証明書を管轄の農業委員会へ、相続開始を知ってから10か月以内に提出します。登記事項証明書を取得するには相続登記を先に行う必要があるため、10か月が相続登記の期限となります。
義務化について詳しくまとめた記事もありますので、詳しく知りたい方はこちらをご確認ください。
相続登記を行わなくてはいけない理由
相続登記を行わなければいけない理由は、義務化によって過料が科される以外にもあります。
相続登記を行わないことによるデメリットについて解説します。
不動産の売却ができなくなる
相続登記を行わないと相続した不動産を売却できなくなります。故人から相続人へ権利が移動しているため、故人名義から買主名義へ直接変更することはできません。
不動産を売却する際の所有権移転登記は買主と共同で行うため、相続登記が完了していない場合は買主側と手続きを合わせることができず、迷惑をかけてしまう可能性があります。
手続きに時間がかかって買主が離れてしまう可能性もありますので、早めに相続登記を完了させることをおすすめします。
第三者へ権利を主張できない
相続登記をしない場合、故人名義のままになっているため、第三者へ、不動産を相続したことを主張できません。そのため、相続人に借金のある人がいた場合、債権者が不動産を勝手に差し押さえてしまう可能性もあります。
不動産を相続したい場合は早めに相続登記を完了させることをおすすめします。また、借入のある相続人が相続放棄を行うと、相続人として扱われないため、債権者が相続した不動産を差し押さえることを防げます。
不動産を担保にできない
相続した土地を活用する、家をリフォームするなどを行う場合、不動産を担保にして金融機関からお金を借りることができます。お金を借りる場合、金融機関は不動産に抵当権を設定して返済が滞った時に差し押さえをしやすくします。
抵当権は登記簿上の所有者と実際の所有者が一致していないと設定ができません。そのため、相続登記しなければ不動産を担保にして金融機関から借入ができなくなります。
賃料の二重払いを警戒される
アパートなど賃貸物件を相続した場合、賃料も相続人が引き継いで受け取ることができます。そのためには相続登記を行い、新しい大家であることを借主へ伝えます。
相続登記を行わずに新しい大家が明確でない場合、借主は誰に賃料を支払うのかわからなくなります。相続人が2人いた場合、二重に支払って損をすることを警戒するため、賃料が支払われない可能性もあります。
借主へ安心してもらい、賃料を支払ってもらうためにも相続登記を完了させて、新しい大家であることを証明することをおすすめします。
権利関係が複雑になって後の世代に迷惑がかかる
相続登記を行わないでいると、法定相続分に従って不動産を共有持分で相続することになります。相続人が複数いて何代も相続登記しないままでいると、ねずみ算式に相続人が増えていきます。
1人に持ち分を集約しようとした場合、多くの相続人から書類をもらい、手続きを進めることになるため、多くの手間や費用が掛かってしまいます。また、権利関係からトラブルに発展してしまう可能性もあるため、放置せずに相続登記の手続きを進めましょう。
相続登記にかかる税金
相続登記を行う場合、書類の収集や作成にかかる実費、司法書士へ依頼する費用の他に、税金もかかります。
どのような税金がどれくらいかかるのか解説します。
相続登記を行うと登録免許税がかかる
不動産の所有権を登記した場合、登録免許税が課されます。相続登記はもちろん、不動産の購入や贈与も登録免許税の対象です。
税率は相続登記の場合、固定資産税評価額の0.4%となっています。不動産の購入や贈与の場合は固定資産税評価額の2%となっているため、相続登記の方が登録免許税を抑えることができます。
固定資産税評価額は「固定資産税課税明細書」や「固定資産評価証明書」から把握可能です。
登録免許税の計算方法
登録免許税は固定資産税評価額に0.4%をかけるだけでは正しく算出することはできません。
まず、課税評価額を算出します。相続する不動産の評価額を合算し、1,000円未満を切り捨てることで課税評価額が算出できます。
次に課税評価額へ0.4%をかけます。出てきた値の100円未満を切り捨てることで登録免許税を算出することができます。
例:土地23,567,891円、建物12,345,678円を相続する場合
23,567,891+12,345,678=35,913,569円→1,000円未満を切り捨てた35,913,000円が課税評価額となります。
課税評価額35,913,000円に相続登記の登録免許税率0.4%をかけると143,652円となります。100円未満を切り捨てた143,600円を登録免許税として納めます。
登録免許税が免除になる場合もある
相続の状況や土地の評価額によって相続登記における登録免許税が免除になるケースがあります。
- 相続登記を行う前に相続人が亡くなった時
- 登録免許税の課税標準価額が100万円以下の場合
相続登記を行う前に相続人が亡くなった時
土地を相続した相続人が相続登記を行う前に亡くなってしまった場合、最初の相続分の登録免許税は免除となります。
例えば、Aが所有していた土地をBが相続します。Bは相続登記を行う前に亡くなり、Cが土地を相続します。この場合、AからBへの登録免許税は免除され、BからCの登録免許税のみが課されます。
この措置は令和7年3月31日までとなっています(2024年3月現在)。
登録免許税の課税標準価額が100万円以下の場合
令和7年3月31日までに相続登記を行った土地で、登録免許税の課税標準となる不動産の価額が100万円以下の場合、登録免許税が免除されます。
例えば、登録免許税の課税標準が100万円の土地を相続した場合、本来は4,000円が登録免許税として課されるのですが、それが免除となります。
この措置は令和7年3月31日までとなっています(2024年3月現在)。
相続登記の費用を安く抑えるならbetter相続登記がおすすめ
相続登記を専門家に依頼すると数万円の費用がかかります。相続の内容が複雑でない場合は自分で相続登記を行える可能性が高いです。
しかし、独学で相続登記を行うには時間や知識が必要となります。自分で相続登記を行いたいけれど、時間や知識が無くて不安という方には『better相続登記』をおすすめします。
専門家のノウハウをシステムに落とし込んでいるため、初めて相続登記を行う方でも自分で簡単に手続きができます。システムの案内に沿って書類を取得し、情報を入力すれば登記申請書や遺産分割協議書が自動で作成されます。
監修者情報
徳永 和喜(公認会計士)
高校卒業して就職後、一念発起して公認会計士試験合格。
2018年から株式会社better創業メンバー取締役としてbetter相続Webアプリケーション開発に従事。公認会計士/税理士とエンジニアを兼務しながら、相続税申告の案件にも携わる。
2022年10月、経営統合により辻・本郷ITコンサルティング株式会社の執行役員就任。better相続事業部長として、自分で相続税申告や相続登記を行う方へより良いサービスの提供を目指している。