小規模宅地等の特例について解説
「小規模宅地の特例って何?」
「節税になると聞いたけど自分も適用されるの?」
小規模宅地の特例を使えば相続税を安く抑えることができると聞いたけれど、難しくてよく分からないですよね。
そこでこの記事では、
- 小規模宅地の特例とは何か
- 小規模宅地の特例が適用される3つの土地
- 小規模宅地の特例(居住用)を受けられる人
について図を用いて分かりやすく解説しています。
さらに、「必要な書類」や「利用の期限」についても解説していますので、小規模宅地の特例について詳しくなるはずです!
目次
小規模宅地等の特例とは「土地の評価額を下げて節税できる制度」
小規模宅地等の特例とは、被相続人(故人)が持っていた土地を最大80%まで相続税の評価額を下げてくれる特例です。
仮に故人の土地の評価額が8,000万円だとしましょう。故人と同居していたような場合に、住んでいる家を相続しただけで多額の相続税が発生してしまい、相続人の負担が重くなるため、このような状況に配慮した制度です。
特例を利用すれば最大80%の減額を受けられるので、8,000万円の評価額が1,600万円まで減額できます。
故人の土地を相続する際にぜひ利用したい制度ですが、特例を適用するためには「人と土地の条件」をクリアする必要があります。
小規模宅地等の特例が適用される土地は3種類
小規模宅地等の特例を適用できる可能性のある土地は3種類です。
- 住んでいた土地
- 事業として使っていた土地
- 貸付けを行っていた土地
3種類の土地のいずれかに該当すれば小規模宅地等の特例が適用できる可能性があります。では3種類の土地について詳しく解説していきます。
1.住んでいた土地
住んでいた土地とは文字通り故人が住んでいた土地で、正式には特定居住用住宅地等と呼びます。
後述する故人の配偶者や同居親族の条件を満たした人に、特定居住用宅地等の小規模宅地等の特例を適用する資格があります。
なお、適用できる面積には限りがあり、最大で330㎡までが適用限度面積です。概ね100坪と覚えておくといいでしょう。
2.事業として使っていた土地
故人が事業を行っていた土地(特定事業用宅地等)も小規模宅地等の特例の範囲内です。事業として使っていた土地は以下の要件を満たしている場合に利用できます。
- 故人が相続開始前3年間以上、その土地で事業を行っていたこと
- 土地を相続した相続人がその事業を引き継ぎ、かつ申告期限まで続けていること
- 土地を申告期限まで保有すること
故人が事業として使っていた土地を持っていて上記の要件を満たしている場合は、小規模宅地等の特例を適用できる可能性があります。
なお、こちらも適用できる面積には限りがあり、最大で400㎡までが適用限度面積です。
3.貸付けを行っていた土地
貸付けを行っていた土地(貸付事業用宅地等)も小規模宅地等の特例を利用できます。たとえば、アパートや駐車場などは貸付けを行っているので、小規模宅地等の特例で相続税をおさえて引き継ぐことが可能です。
貸付けを行っていた土地に小規模宅地等の特例を利用する条件はこちらです。
- 故人が相続開始前3年間以上、貸付を行っていた土地であること
- 土地を相続した相続人が貸付事業を引き継ぎ、かつ申告期限まで続けていること
- 土地を申告期限まで保有すること
故人がアパート経営などを行っていた際には適用できる可能性があります。参考にしてください。なお、こちらも適用できる面積には限りがあり、最大で200㎡までが適用限度面積です。
また土地が複数あり、貸付事業以外に居住用なども適用する場合には、下記の計算式が適用限度面積となりますので注意が必要です。
居住用土地の面積×200/330+事業用土地の面積×200/400+貸付用土地の面積≦200㎡
小規模宅地等の特例を受けられる人は3種類
事業用や貸付用の土地に関しては相続人の要件はありませんが、居住用の土地は相続人ごとの要件を満たす必要があります。
小規模宅地等の特例を利用できる人は以下の3パターンです。
- 被相続人の配偶者
- 被相続人の同居親族
- 家なき子
では特例を受けられる3種類の人について解説していきます。
1.被相続人(故人)の配偶者
配偶者とは亡くなった人のパートナーのことを指します。たとえば、夫が亡くなった場合は妻が配偶者です。
2.被相続人(故人)の同居親族
同居親族とは、亡くなった人と同じ家に住んでいた親族のことです。父親が亡くなった場合に、息子が一緒に暮らしていれば小規模宅地等の特例を受けられます。
しかし、同居親族という条件は曖昧で、たとえば以下のケースは小規模宅地等の特例を利用できません。
- 自分の持ち家があるが介護のために半分同居していた
- 住民票が同じだけで実質的には同居していない
逆に単身赴任していた場合でも、生活の拠点として利用されている家屋といえる場合には特例を利用できることもあります。状況によって同居親族とみなされるかどうか変わるので、自分で判断できないときは税理士に相談してみましょう。
3.家なき子
家なき子とは簡単に言うと「賃貸等に住んでいて自分の持ち家を持っていない親族」のことです。
小規模宅地等の特例を利用できる人は「亡くなった人と同居していた配偶者もしくは同居親族」なので、利用できる人が限られていました。
しかし、家なき子は同居していなくても良いので、条件に当てはまれば家なき子の特例を使えます。
家なき子の特例も通常の小規模宅地等の特例と同様で、最大80%の減額を受けられる制度です。一見すると家なき子の特例の方が利用しやすく見えますが、非常に条件が厳しくなっています。
家なき子の特例の要件
- ①故人に配偶者がいない
- ②被相続人が亡くなったときに同居している法定相続人がいない
- ③相続が始まる3年以内に、自己もしくは自己の配偶者、三親等内の親族、自己と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋に居住したことがない
- ④相続した土地を相続開始時から相続税の申告期限まで有している
- ⑤相続を始めたときに賃貸アパート・マンションに住んでいる家屋を今まで所有したことがない
- ⑤が非常にわかりづらいですが、家なき子特例を適用するため、相続が発生する直前に自ら所有していた家を第三者に売却して賃貸に変更するという事案が頻発したため、このような要件が足されました。
5つの条件を満たして初めて、家なき子の特例が使えます。家なき子の特例は条件が複雑なので、よくわからない場合は税理士に相談した方が良いでしょう。
なお、上記以外でも故人と生計を共にしていた親族が住んでいた土地も小規模宅地等の特例の対象です。「生計を共にしていた」とは財布を一つにしているという意味なので、別々に生活していても同じ財布で生活している場合は利用できます。
例えば、相続人が学生で故人が所有していたマンションに1人で暮らしており、仕送りを受けて生活をしている場合などが該当します。
小規模宅地等の特例に必要な5つの添付書類
小規模宅地等の特例を適用申請するためには、以下の書類を用意する必要があります。
- マイナンバーを確認できる書類
- 相続人全員を明らかにする戸籍謄本
- 遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
- 相続する人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
では具体的にどのような書類を用意すれば良いのか解説していきます。
添付書類1.マイナンバーを確認できる書類
小規模宅地等の特例にはマイナンバーが必要です。マイナンバーはマイナンバーカードに載っているのでカードを持っていれば問題ありません。
もしマイナンバーカードを持っていない場合は、マイナンバーの通知カードやマイナンバーが記載された住民票でも問題ありません。ただし、通知カードは廃止されたため、住所が変わっている場合にはマイナンバーの記載がある住民票が必要です。
添付書類2.相続税申告書の添付書類
小規模宅地等の特例を適用する場合、相続人全員の戸籍謄本が必要です。法定相続情報の登記を行っている場合には、法定相続情報一覧図の写しでも問題ありません。
書類の名称 | 条件 |
戸籍謄本 | 被相続人に関する全員の相続人が明らかになっている |
相続開始から10日以上経過した後に作られた | |
法定相続情報一覧図の写し | この続柄が実子か養子かわかる |
養子だった場合は養子の戸籍謄本もしくは抄本が必要 |
それぞれの条件を満たした書類のいずれか一方があれば問題ありません。
添付書類3.遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
小規模宅地等の特例には遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写しも必要となります。
遺言書がある場合には、遺言書の写しを提出します。遺言書が無い場合には遺産分割協議書の写しを提出します。
添付書類4.相続する人全員の印鑑証明書
上記添付書類3で遺産分割協議書を作成している場合には、相続人全員の印鑑証明書も必要になります。
※補足:遺産分割協議書は印鑑証明書に押印したものと同じ印鑑でないと認められないので注意しましょう。(遺産分割協議書とは、遺産分割の方法や相続の割合を決める会議の内容をまとめた書類のこと)
小規模宅地等の特例で追加書類が必要になる2つのケース
以下のケースで小規模宅地等の特例を利用する場合は追加書類が必要になります。
- 故人が生前に老人ホームに入っていた
- 家なき子の特例を利用する
続いて2つのケースに分けて必要になる書類を紹介していきます。
ケース1.故人が老人ホームに入っていた
故人が生前に老人ホームに入っていて相続直前に自宅に住んでいなかった場合は、老人ホームに入居していたが相続した土地を居住用に使っていたことを証明する書類が必要です。たとえば、以下の書類が必要です。
- 被相続人の戸籍の附票
- 要介護認定書類または要支援認定書類
- 老人ホーム等の施設入居契約書
上記の書類をコピーしたものを提出すれば、故人が老人ホームに入っていても小規模宅地等の特例を利用できます。
ケース2.家なき子の特例を利用する
亡くなった人と一緒に暮らしていなかった親族でも、特定の条件を満たせば最大80%減額して土地の相続ができる「家なき子の特例」を使う場合は以下の書類が必要です。
- 相続を始める3年以内における住所や居所を証明する書類(戸籍の附票など)
- 相続開始時に自分が住んでいる家屋を相続開始前に所有していたことがないと証明する書類(賃貸契約書の写しなど)
- 相続開始前3年以内に居住していた家屋が「4つの条件」を満たしていないことを証明する書類(家屋の全部事項証明書(登記簿謄本)など)
「4つの条件」とは以下のものです。
- 土地が自己所有ではない
- 自己の配偶者所有ではない
- 三親等いないの親族が所有していない
-
取得者と特別の関係がある一定の法人の所有ではない
家なき子の特例の場合は適用要件が厳しいので、必要書類の用意もおのずと難易度が上がります。
小規模宅地等の特例の添付書類は故人の死後10か月以内に提出しよう
相続税の申告期限は故人が死亡してから10か月以内です。小規模宅地等の特例を適用するためには、基本的には申告期限までに申告を行う必要があります。時間に猶予はありますが、書類集めに時間がかかることもあるので、なるべく早く申請するようにしましょう。
もし申告期限を過ぎた場合でも申請できます*。ただし、申告期限までに遺産分割が決まらない場合には、申告期限までに法定相続割合で分割したと仮定して仮の申告を行ない、併せて「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出します。その後申告期限から3年以内に遺産分割を完了させて更生の請求を行う必要があるので注意が必要です。
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小規模宅地等の特例のまとめ
小規模宅地等の特例について紹介してきました。
- 小規模宅地等の特例を利用すれば故人が住んでいた土地を最大80%減額して引き継げる
- 小規模宅地等の特例は被相続人の配偶者・同居親族や家なき子が利用できる
- 小規模宅地等の特例の申請にはマイナンバーや遺言書の写しなどが必要
- 小規模宅地等の特例は税理士に相談するのが安全
小規模宅地等の特例は基本的に故人と住んでいた配偶者や同居親族であれば利用できます。
しかし、適用要件や必要な手続き、書類などがその人の状況によって特例を受けられるかどうか異なります。さまざまな要因が絡まって複雑になっているので、個人で小規模宅地等の特例を適用できるか判断するのは簡単ではありません。不安な場合は税務署などへ相談することをおすすめします。
小規模宅地等の特例を利用する場合、相続税申告が必要となります。相続税申告を自分で行い、税理士に依頼する費用を抑えたい方は『better相続申告』のご利用をおすすめします。
専門家のノウハウをシステムに落とし込んでいるため、初めての方でも自分で相続税申告ができるようになっています。また、小規模宅地等の特例にも対応しているため、適切な税額で申告することもできます。
監修者情報
徳永 和喜(公認会計士)
高校卒業して就職後、一念発起して公認会計士試験合格。
2018年から株式会社better創業メンバー取締役としてbetter相続Webアプリケーション開発に従事。公認会計士/税理士とエンジニアを兼務しながら、相続税申告の案件にも携わる。
2022年10月、経営統合により辻・本郷ITコンサルティング株式会社の執行役員就任。better相続事業部長として、自分で相続税申告や相続登記を行う方へより良いサービスの提供を目指している。